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- 2026-10-22
リーダーシップに性別は関係ない
Nhan Huc Quan (*)
New Toyo(ベトナム)のゼネラルマネージャー、Nhan Huc Quan 氏は、先進的な企業かどうかを測る基準は、女性管理職の人数だけではないと語る。女性に真の機会が与えられ、その声が尊重され、能力を最大限に発揮できる環境が整っているかどうかが重要だという。
今日、女性がキャリアを築き、リーダーシップを発揮する機会は、かつてないほど広がっている。一方で、家庭や社会における役割への期待は依然として大きい。こうした多様な期待の中で、すべての女性の成功を測る共通の物差しは存在するのだろうか?
約30年にわたり企業の現場と経営に携わってきた New Toyo(ベトナム)の Nhan Huc Quan 氏に、固定観念の乗り越え方、人生における多様な責任との向き合い方、そしてライフステージに応じた成功の捉え直しについて聞いた。
すべての役割で完璧を目指す必要はない
女性がキャリアを伸ばす機会は広がる一方、家庭からの期待も大きくなっています。こうした期待は、女性にとって原動力でしょうか。それとも重圧でしょうか?
Nhan Huc Quan 氏:期待は励みになります。しかし、理解や相互の支えがなければ、容易に重圧へと変わってしまいます。
アジアの文化では、女性は仕事で成果を上げると同時に、妻や母としての役割も果たし、円満な家庭を築くことが求められがちです。考えるべきなのは、男性が成功すると家族は頼もしい支えと見なされるのに対し、女性が成功すると、家庭をないがしろにしていないことまで証明しなければならない場合があるという点です。
幸せな家庭を築くことは、女性がどれだけ犠牲を払うかで測るものではなく、家族全員が担う責任だと認識すべき時期に来ています。家庭が新たな負担ではなく支えとなれば、女性は成長し、社会に貢献する力をさらに得られるでしょう。
New Toyo(ベトナム)のゼネラルマネージャーになるまで、女性のリーダーシップに対する固定観念をどのように乗り越えてきましたか?
Nhan Huc Quan 氏:私がキャリアを築いてきたのは、従来、管理職の大半を男性が占めていた製造業です。当時は、技術やテクノロジーの知識、生産管理能力、さらには激しい市場変動への対応力が求められる職場に、女性は適応しにくいという固定観念がありました。
私自身、母親としての責任と管理職としての仕事の両立に悩んだ時期があります。二人の子どもを出産した後は、事情が許す限り、意識的に遠隔で仕事とのつながりを保つようにしました。ただし、これは私自身の環境と責任感に基づく個人的な選択であり、ほかの女性にも求める基準ではありません。
やがて、固定観念を覆す最も説得力のある方法は、反論することではなく、具体的な成果で実力を示すことだと気づきました。強いチームづくり、管理体制の強化、企業文化の醸成、業務効率の向上に取り組むとともに、従業員の収入や福利厚生の改善を段階的に進めてきました。
リーダーとしての力量を決めるのは性別ではありません。その人の考え方、勇気、人柄、そして組織にもたらす価値だと考えています。
人材マネジメントでは、共感と思いやり、励ましを大切にされています。経営において、共感力と決断力をどのように両立させていますか?
Nhan Huc Quan 氏:経営において、共感力は人を理解するために必要であり、決断力は組織が進むべき方向を見失わないために欠かせません。
私は相手の話にじっくり耳を傾けます。ただし、原則や企業倫理、会社の長期的な利益に関わる場合は、たとえ難しい判断でも、リーダーには決断する信念が必要です。
経験から学んだのは、すべての場面で強硬な姿勢が必要なわけでも、譲歩が常に思いやりを意味するわけでもないということです。大切なのは、一つひとつの判断が適切で、公正で、一貫していることです。
優れたリーダーは常に強く見せる必要はありません。柔軟に対応すべき時と、決して妥協してはならない時を見極める必要があります。
キャリアのために私生活で優先したいことを断念した経験はありますか。また、その経験は「女性はあらゆる役割で優秀でなければならない」という考え方に、どのような変化をもたらしましたか?
Nhan Huc Quan 氏:もちろんあります。ただ、私はそれを犠牲ではなく、自分の意思で選び取ったことだと考えています。
これまで、夜や週末、時には休日も、勉強や読書、経営知識の習得、自分を高めるために費やしてきました。
どんな選択にも機会費用が伴います。あることに時間を使えば、その分、別のことに充てられる時間は少なくなります。女性が常に、すべての役割で完璧である必要はないと気づきました。大切なのは、人生の各段階で何を優先すべきかを見極め、その優先順位に合った選択をする勇気を持つことです。
自分自身の価値観で成功を定義する
長年にわたり企業を率いる中で、「成功」の定義はどのように変わりましたか?
Nhan Huc Quan 氏:成功は決まった到達点ではありません。人生の段階とともに変化していく概念です。
若い頃は、良い職場環境を見つけ、学ぶ機会に恵まれ、自分の能力を発揮できることが成功だったかもしれません。中年期には、仕事での実績、社会的な評価、経済的な自立を重視するようになることが多いでしょう。
しかし、60歳に近づくにつれて、かつて重要だと思っていたものが、必ずしも最優先ではなくなりました。積み重ねてきた成果は今も大切にしていますが、役職や富、他者からの評価だけを成功の尺度とは考えなくなりました。
若さが「何者か」になろうと努力する旅だとすれば、成熟とは、他人の基準で自分の価値を証明する必要はなく、ありのままの自分を生きることこそが、最も深い意味での成功だと教えてくれるものです。
New Toyo(ベトナム)の経営に加え、執筆や知識の共有にも取り組まれています。人生の今の段階で、これらの活動にはどのような意味がありますか?
Nhan Huc Quan 氏:本を書くことを、職務経歴書に付け加える新たな実績だとは考えていません。人生と対話し、学んだことを分かち合うための方法だと捉えています。
長年の仕事と人生経験を通じて、最も大切な教訓の中には、教室では得られないものがあると知りました。それは挫折や失敗、自分の限界を超えようとした瞬間、そして静かに自分を見つめ直した時間から生まれるものです。
私が書くのは、そうした学びをまず自分のために残し、さらに誰かの参考になればと願うからです。人にはそれぞれ事情があり、歩む道も違います。ですから、成功の公式を示そうとは思っていません。
経営が価値の生み出し方を教えてくれたとすれば、執筆はその価値を人に手渡す方法を教えてくれました。人生の今の段階では、それが素朴でありながら深い喜びとなっています。
女性は企業経営やリーダーシップの分野で、能力を発揮し、より大きな役割を担うようになっている。
同時に、成長や自らの価値観の実現に向けた機会も広がっている。写真:会社提供。
女性が性別に関する固定観念に縛られず、キャリアを発展させられるようにするには、企業は何を変える必要がありますか?
Nhan Huc Quan 氏:企業は「女性が働きやすい条件を整える」という発想から一歩進み、誰もが能力に基づいて平等に成長の機会を得られる環境を築くべきです。
New Toyo(ベトナム)では、現在、管理職チームの約25%を女性が占めています。社員の研修と育成を重視し、健康増進プログラムを実施するとともに、心の健康にも目を配っています。また、読書や知識の共有を通じて、学び続ける企業文化の醸成に努めています。
しかし、意義のある福利厚生だけでは十分ではありません。それ以上に重要なのは、女性がより大きな責任を担う職務に就く機会を設け、公正な評価を行い、その能力に見合った形で貢献を認めることです。
私は、ベトナムで「công、dung、ngôn、hạnh」と呼ばれる伝統的な徳目、すなわち徳・容姿・言葉遣い・振る舞いを大切にしています。ただし、現代社会においては、女性が知性を磨き、経済的に自立し、自分に合った生き方を選ぶ権利を持つという視点から、これらの価値観を捉え直す必要があります。
女性は男性よりも細やかな気配りや手先の器用さに優れていると見なされるからといって、特定の職業に限定されるべきではありません。職業の機会は、一人ひとりの能力と希望に基づいて開かれるべきです。
先進的な企業かどうかは、女性管理職の数だけで判断すべきではありません。女性に真の機会が与えられ、その声が尊重され、持てる力を最大限に発揮できるよう支えられているかどうかが問われるのです。
貴重なお話をありがとうございました。
(*)New Toyo (Vietnam) アルミ紙包装有限公司 総経理
